02. 安心を感じるもの

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100201モハーの断崖

1枚目の写真はアイルランドの西海岸にあるモハーの断崖です。その断崖沿いの歩道には手摺りのようなものは何もなく、崖とは反対側に沿って膝ほどの高さの薄いスレート板が立ち並んでいるだけでした。
スレートのその粗い質感やつくりが「ここから先は美しい景色ですが危険を伴います。これより先に入る場合は自分自身で身を守ってください。」と暗示しているかのように感じられ、同時に自然に対して人間を大人扱いしているなあと共感できました。その反面そのスレートによる境界が、不思議と安心感を与えてくれているのです。

 

100202伊豆大室山

2枚目の写真は伊豆の大室山の山頂噴火口の稜線です。一本のロープがやはり内側に張られていました。それは一本のロープにすぎないのですが、仕切るのではなく、ロープで境界を示すという非常に日本的な方法です。それは眺望の邪魔をせず、アイルランドの断崖と同じように稜線を歩くのに安心感を与えてくれているのです。
もしも、これらの道にスレート板やロープがなかったとしたらどうでしょうか? 同じ歩道なのに足がすくんで腰がひけてしまい、歩くのが少し怖くなってしまうことでしょう。

しかし、スレート板やロープで「境界を示す」ことによって歩道はより確かなものとして認識されるようになります。それが安心感につながる暗示になっているんだと気づかせてくれています。