1枚目は沖縄の中村家住宅の写真です。18世紀中頃に建てられたというこの住宅が沖縄戦の戦禍をのがれたという事実にまず驚き、そして敷地内に入るとその屋根の美しさにひきつけられました。
住宅の周囲は防風林として屋根よりも高い木(フクギ)に囲まれていました。そのため周囲の家々とは縁が切れていたため、漆喰で固められた赤い瓦屋根の存在をより強く感じていたのだと思います。棟の長さが短い寄棟の大きな屋根のデザインは重すぎず軽すぎず、心地よい安心感を与えてくれていました。
2枚目の写真はクロアチアのドブロブニクです。旧市街の周りを取り囲んでいる城壁の上から旧市街を見下ろしています。同色の洋瓦で統一されている屋根が一面に広がり、背景の青いアドリア海とマッチした美しい風景でした。
屋根は機能としては強い日差しや雨風をしのぐという大切な役割を担っていますが、ドブロブニクの一面屋根の風景を眺めていると、家々の屋根が集まることによって街の風景がつくりだされているということを改めて気づかされます。
設計中に屋根のデザインに行き詰ると、道を歩いている時も、電車に乗っているときも、屋根ばかりを目で追ってしまうことがしばしばあります。屋根を中心に建築を見ていると屋根がいかに街並みに影響を与えているのかが見えてきて、建築における屋根の力を再認識させられます。